勉強は人生を豊かにしてくれる重要なツールです。特に社会人の場合、適切な時期に適切な方法でおこなえば収入を上げることにもつながるなど、直接的なメリットは計り知れません。
そんな勉強にとって極めて重要で、それでいてなかなか顧みられていないことが一つあります。
それが「やる気」です。
やる気がなければ、どんなに素晴らしい勉強の計画を立てても実行することができません。気合と根性で机に向かったとしても、やる気がなければ長続きすることはできないのです。やる気の出ないことに数ヶ月も関わるようには人間の心ができていません。
「やる気スイッチ」という言葉があるように、やる気はオンとオフの状態を行ったり来たりします。ところが多くの人はどうやったらスイッチが入るのか分からないまま、なんとなく勉強を始めようとしてしまいます。そもそも継続的な勉強にとって「やる気」がどれほど重要なのかについて、ほとんど意識すらされていません。
やる気の問題は奥が深く、様々な分野で研究が続けられています。また、モチベーション管理は今やビジネスにおけるもっとも重要な課題の一つとして位置づけられています。
わたしが東大に現役で入れたのも、働きながらにして難関資格を取れたのも、やる気の出し方や管理方法について人一倍の注意と関心を払っていたからといっても過言ではありません。
そこで、ここではどうやったらやる気スイッチを入れることができるのか、どうやれば長期間にわたって勉強をつづけられるのか、基本的なところから紹介して行きたいと思います。
今まで何度も勉強に挫折してきたり、気分がのらずに思うような結果が出せていない人は、むやみやたらに机にむかうのではなく、ここに書いてあることをしっかりと実践してみてください。きっと、新たな発見があるはずです。
目次
なぜ人は長続きしないのか?
やる気について考える前に、まずは長続きせずに挫折してしまった経験を思い出してみましょう。
たとえば、高い月謝を払っているのにいつの間にか行かなくなってしまった英会話教室。
あるいは、今度こそとダイエットしようと決意したのに気づいたら元通りの食生活。
こんな経験は誰にもあるのではないでしょうか?
あるいは勉強であれば、最初の数ページしか手をつけずに放ったらかしになっている参考書が山積みに、なんていうことも多いかしれませんね。
これらはみな、「やる気」の問題と密接に関わっています。始めた頃のやる気が、時が立つに連れて減衰していくというのは、誰にも経験のあることではないでしょうか。
新しいことを始めた時はワクワクした気持ちになり、やる気に満ちあふれているものです。たとえば新しい教科書をもらったときのことを思い出してみてください。シャキッとした気持ちになり、勉強にも自然と力が入りますよね。ジョギングであれば、新品のランニングシューズを手にした瞬間、ダイエットであれば始めて訪れるジム。こんなとき誰しもが、やる気と希望で満たされているはずです。このように、多くの人は新しいものや体験を通してやる気を実感することができます。
こうして生まれたやる気をうまくスタートダッシュに利用して持続的に努力し続けることができれば、夢や願いが叶う日も近いでしょう。
しかし、残念なことに思ったようにはうまくいきません。
新しかった教科書も次第に色あせ、それにしたがってやる気もみるみると失われていくという経験をしたことのある人も多いのではないでしょうか。毎日勉強しようと思っていたのだけれども今日はちょっと調子が悪いから明日にしよう、そんなふうに計画をずるずると引き伸ばしていくうちに、教科書の存在そのものを忘れていくといった感じでしょう。
それではなぜやる気はなくなってしまうのでしょうか?
それは、やる気が新鮮味と結びついた状態になっており、新しいというだけでやる気がでるという錯覚状態に陥っているからです。
どんな人でも新しいものを見たり買ったりした瞬間は、新鮮な気分で気持ちも高まっているはずです。このとき、脳のやる気を支配する部分も興奮状態に陥っており、そのものを見るだけでやる気が出るという状態になっています。
ところがどんなに新しいものでも時が経てば新鮮味は失われていきます。それと同じように、当初持っていたやる気は次第に失われていき、やがて消滅してしまうのです。
やる気がなくなるまでの時間はケースによってまちまちですが、三日坊主という言葉があるくらいですので三日くらいしか続かないことも珍しくありません。そのくらい、この手のやる気は長続きしません。このような幻想ともいえるやる気だけに頼って、行動が長続きすると考える方が不自然なのです。
数ヶ月から時に数年にわたって続くことになる勉強を支えるには、このような瞬発的なやる気だけではまったくもって不十分なのです。
勉強を継続しておこなうために大事なのは、こうした瞬発的なやる気ではない方法でモチベーションを高めていくための工夫です。
脳科学が明らかにするやる気スイッチの入れ方
それでは、瞬発的でない、いわゆる持続的なやる気というのは、いったいどうしたら出すことができるのでしょうか?
実は最新の脳科学が、やる気の出したかについて大きなヒントを与えてくれています。
結論から言うと、人のやる気というのは実際に行動を起こすことであとから自然と出てくるのです。やる気が出てから行動を起こす、という順序ではないのがポイントです。
大脳生理学の研究によると、人間の脳は機能や役割によって活性化する部分が異なっていることが知られています。視覚情報や聴覚情報を専門的に処理する場所や、記憶を司る部位のほか、恐怖や喜びなどの感情によっても活性化される領域が決まっています。
そしてやる気の場合、大脳基底核と呼ばれる場所の中にある線条体という部位が大きな役割を担っていることが最新の研究で分かってきました。
線条体とやる気の関係が明らかになると、今度は逆に何をしているときにやる気が出るのかを、線条体の活性化具合を見ることで明らかにすることができるようになるのです。その結果明らかになったこと、それは実際に行動を起こしてみることがやる気の活性化につながるということでした。
この部分は少しわかりにくかもしれませんのでもう一度説明します。
つまり、私たちはなんとなくやる気がでないから行動することができないと思っているわけですが、実際のところはそれとは真逆で、やる気とういのはとにかく行動を起こすことによって後からついてくるものだということが分かってきたのです。とにかく体を動かす、それこそがやる気スイッチをオンにするための秘訣だというのです。この驚くべき事実こそが、継続してコツコツとものごとを続けるための答えです。
やる気という極めて感情的な問題が、実は行動という身体的なことと密接な結びつきがあるというのは少々意外なような気もします。ただ日常生活を振り返ってみると、なんとなくやる気が出なかったことも体を動かし始めると意外と集中して、あっという間に時間が過ぎてしまったという経験のある人は多いのではないでしょうか。つまり、まずは体を動かすこと、これこそがやる気を引き出すために絶対に必要な第一歩ということになるのです。
勉強の場合は体を動かすといったイメージがつきにくいかもしれませんが、あまり難しく考える必要はありません。まずは机に向かうこと、そしてペンで何かを書いたりキーボードを叩いたりすること、これだけで十分体を動かしたことになるのです。
ここで一つ例を出しましょう。自動車を手で押して動かすことを想像してみてください。最初のうちは重くて、自動車もほとんど動きませんよね?ところがいったん自動車が動き出せば、あとは慣性の法則に従って少しの力で押し進めることができるでしょう。
やる気の出し方もこれに似ています。最初はとにかく億劫で、体を動かすのに多くのエネルギーを使いますが、ひとたび作業を始めれば、あとは自然とやる気がついてきます。これが、やる気スイッチの入れ方なのです。
ここがポイント
- 瞬発的なやる気にまどわされない
- やる気を出すためには、まずは行動をはじめること
- とりあえず机に座って、ペンで何かを書いたりしてみよう
実力にあった教材を使うことが重要
やる気を出すには実際に行動することが大事である。これこそが、最新の脳科学が明らかにしたやる気スイッチの入れ方でした。一方でこんな疑問を持つ人もいるかと思います。たとえ実際に机に向かうことができたとしても、やる気が続かない、すぐに集中が切れてしまうことがある、一体どうすればいいのか。
そうなのです。実はせっかくやる気スイッチを押しても、やる気の波に乗れない場合があるのです。
なぜこうしたことが起こるのか?
それは、身の丈にあった教材を使っていないからです。
逆に、自分にぴったりのレベルの教材を使っていれば、時間がたてばたつほど、やる気はどんどんと高まっていき、いわゆる「ゾーン」といった集中度の高い領域に入ることもできます。
自分の実力にあった教材を使っていれば、問題は比較的スラスラと解けるはずです。問題が解けた瞬間、脳の中では「やり遂げた」という喜びの感情が生まれ、これがやる気をさらに高めます。やる気が高まると、今度は身体的な動作に反映されますので、ペンの進み具合もはかどります。そうすると、今度はその行動が脳に戻りますので、やる気がさらに高まる、というわけです。このようにやる気と行動がグルグルといったりきたりする、この状態のことをフィードバックループと呼びます。
一方で自分のレベルよりも明らかに上の教材を使ったとしたらどうなるでしょうか?
例えば机に向かって問題を解きはじめたとき、内容が自分のレベルに合っていないため解けるスピードが遅くなる、そのためにペンを動かす手も止まりがちになる、その結果として線条体の活動が弱くなり、最終的にやる気が失われてしまう、というループになってしまいます。こちらもフィードバックループと呼ばれる状態です。
どちらも同じフィードバックループですが、結果はまったく異なったものになります。やる気が高まる前者のフィードバックループを「ポジティブフィードバックループ」と呼び、逆にやる気がどんどんなくなってしまう後者を「ネガティブフィードバックループ」と呼んで区別することもあります。
ポジティブフィードバックは、例えるなら緩やかな坂道を自転車で下るようなものです。最初の一漕ぎさえ頑張ってしまえば、あとは重力の助けにしたがって自然とスピードが出ていきます。
これに対してネガティブフィードバックは坂道を上り続けるようなものです。道を進むには常にペダルを漕ぎ続けなければなりません。そして、どんなに頑張ったとしても漕ぐことをやめた瞬間に自転車は止まってしまいます。これでは努力すればするほど消耗してしまいますし、坂道を下っている人たちにはどんなに頑張っても勝てません。
私たちが継続的にやる気を維持するには、ポジティブフィードバックになるような、自分にぴったりの教材を探す必要があるのです。
自分の実力にあった教材を探すのは、実はそれほど簡単ではありません。コツとしては少し簡単すぎるかな、くらいの問題を確実に解けるまで何回も繰り返すと良いでしょう。
経済的に余裕があれば家庭教師を雇うという手もあります。最近ではパーソナルトレーニングという個別サービスを展開している英会話スクールもあります。専門家が自分の実力にぴったりの教材を探してくれるというのは、あなたが考えているよりもはるかに大きな価値があります。
参考記事 パーソナルトレーニングのRIZAPイングリッシュで英語の実力は上がるのか?
ここがポイント
- やる気を出し続けるには、実力にあった教材を使うことが重要
- 問題が解けるのでさらにやる気が出るというポジティブフィードバックが生まれる
- 教材探しは意外と難しいので、家庭教師やパーソナルトレーニングを使う価値は大きい
モチベーション管理のための考え方
ここまでの話しをまとめましょう。
やる気を出し続けるためには乗り越えなくてはならない大きな壁が二つあります。
一つは実際に体を動かし始めるということ。自転車の例でいえば、最初にペダルを漕ぐ瞬間ということになります。そのためには、体を動かし始めること自体を習慣化させましょう。
例えば、勉強する場所や時間を予め決めておくことは重要です。私は朝方の人間なので、今でも必ず5時から机に向かう習慣を付けています。多少疲れていたり眠かったりしても、とりあえずは机に向かって作業をし始めると、次第とやる気が湧いて来るのを実感することができます。
そしてもう一つの壁は、動かし始めた体が継続的に前に進めるかどうかということ。つまり、活動がポジティブフィードバックでなくてはならないということです。自転車で進む道が上り坂なのか下り坂なのか、しっかりと見極めなくてはなりません。
そのためには、自分にぴったりの教材を探すことが重要です。良くある間違いとして、かなりレベルの高い問題や参考書などを買ってきて勉強をする人がいますが、かえってやる気を奪うだけで良いことは何もありません。なにごとも基礎が重要だというのは私が東大を受験したときにも痛感したことではありますが、少し簡単かなと思えるくらいの教材を繰り返し解くことが、集中力を高め、やる気を持続させるための秘訣です。
これら二つの壁を乗り越えることができて初めて、継続的にコツコツとものごとを進めるためのやる気を維持し続けることができるのです。このことを意識しない限り、数ヶ月〜数年という長い期間にわたって勉強を続けるのはまず不可能と考えたほうが良いでしょう。
逆にこうしたことがしっかりと頭に入ってさえいれば、信じられないほど長期間にわたって、最高レベルの集中力で勉強を続けられます。
やる気スイッチのメカニズムについて理解している人というのは本当に限られているため、このスキルが身につけばライバルに圧倒的な差をつけて結果を出すことができるのです。
ここに書かれていることをしっかりと意識した上で、あらためて今までの勉強について見直してみれば、きっと新たな発見があるはずです。ぜひとも、チャレンジしてみてください。
勉強の習慣が身についたら、まずは英語をマスターしよう
勉強を継続するためのモチベーション管理の具体的な方法が身についたら、次はいよいよ実戦です。
社会人にとってもっとも役に立つのは、英語の勉強。特にTOEIC800点を超える実力がつけば、周りとの差も大きくつきます。
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私の書いたレビュー記事です。
レビュー記事 【スタディサプリENGLISH】TOEIC L&R対策コースのレビューとおすすめ使い方
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やる気に関する本としては、下記のものが有名です。最新の研究成果などもふんだんに紹介されており、読み物としても非常に面白いです。