米国公認会計士(USCPA)は難易度が日本の会計士試験に比べて比較的低いにも関わらず、国際的な会計・監査の知識をもった人材と見なされることから、転職に有利な資格ということで近年注目を集めています。
「難易度が比較的低い」と書きましたが、決して一筋縄にいくような資格ではありません。かなり長い間にわたって勉強を続けなければならない上に、アメリカの資格とあって情報もそれほど多くありません。特に、具体的な勉強の計画については多くの受験生が苦労しているところでもあります。
そういう私自身も勉強のやり方に悩み、いろいろと失敗もしてきました。BECの一回目の試験に失敗してからはほとんどやる気を失ってしまい、挫折しかかっていた時期もあります。
そこでこの記事では、私がUSCPAを受けようと思ってから各科目を受験し、どのように失敗したか、そしてどのように立て直していったのか、具体的な勉強法などを交えて説明してみました。
私自身もこの記事を受験前に読んでいれば、もう少し効率的に勉強できたはずだと思えるような内容となっています。これから受験を検討している方は是非とも目を通して、参考にしてみてください。
【参考記事】USCPAとは?学生にも社会人にもオススメの最強会計資格を徹底解説
2012年春 USCPAに出会う
2011年まで理系の研究者として国立の研究機関に勤務していたのですが、研究者としての限界やビジネスへの興味などから思い切ってメーカーのマーケティング職に転職しました。
仕事自体は大変面白かったのですが、もともと研究者だったこともあって経理や営業プロセスなど分からないことだらけでした。
そんな中、Webのバナー広告でたまたま目にしたUSCPAという資格に出会います。会計や監査などの知識が身につく上に、英語の勉強にもなる。しかも資格試験合格後はキャリアの道も広がる。
なんて素敵な資格なんだ!
そう思ったわたしは早速e-ラーニングコースに申し込みをしたのでした。
受講開始から挫折まで
2012年6月 受講開始
早速受講の申し込みをした私は、まずは会計科目であるFARから勉強をスタートしました。
もともと簿記2級の資格は持っていたのと、数字を見るのは嫌いではなかったため、特に苦労せず順調に勉強を続けられた時期でした。今にして思えば計画などは立てず、ただ興味と好奇心だけで勉強ができていた時期だったように思います。
2012年9月 山のような手続きに心が折れそうになる
USCPAは出願州によって受験資格が異なります。私の選んだアラスカ州は大学で取得した会計関連単位が少なくて良いこともあって、自分のような理系出身者にとっては定番の州です。
会計単位が少なくてすむとはいっても、まったくゼロではありません。そこで足りない分についてはスクールでのe-ラーニングの受講分を当てることができるのですが、それなりにいろいろと手続きをする必要があります。また同時に、出身大学から成績証明書を取り寄せる必要もあります。
これらが揃うと、今度は大学の単位が受験資格を満たしていることを証明するため、専門の機関に書類を出すのです。
それにしてもこんなに手続きがあるのかと、書類の束を見ながら心が折れそうになったのを覚えています。
2012年10月 BEC勉強開始
手続きの煩雑さに悩みながらも、とりあえずFARの勉強は一通り終えることができました。その時私は受験料を節約するためにFARとBECの2科目を同時に受験申請しようと考えていましたので、引き続いてBECの勉強に取りかかることにしました。
BECは簿記でいうところの工業簿記的な内容のほか、経済学やITに関する基礎的な知識など、全受験科目の中でも最も多岐にわたる内容が出題されます。
こちらの内容も比較的やっていて楽しかってので、特に計画なども立てずに気が向いた時に勉強するというスタイルのままでした。ただ今にして思うと、このあたりから勉強のペースが落ちてきたように思います。
2013年1月 サボりぐせがつく
BECの勉強も一通り終え、いよいよ受験日を決めることになるのですが、ここで意外な落とし穴にはまります。
USCPAの試験は国内で受けることができるのですが試験日は特に決まっておらず、自分でWebから予約することになります。そこで土日祝日に限って調べたところ、直近の予約は全て埋まってしまっていたのでした。USCPAは社会人受験が多い資格のため、週末の予約はかなり早くに埋まってしまうのです。
年明け早々にFARを受けるつもりでいたのが、結局のところ2月後半まで待たなくてはならなくなってしまいました。その間、AUDの勉強を始めようとも思ったのですがなんとなくやる気がでず、かといってFARの勉強はやり尽くした感もあったので(実際はそんなことは全然なかったのですが)、週末などはほとんど勉強しない状況になってしまいました。
今にして思えば、とにかく受験日だけは早めに決めてしまえばよかったと思います。そうしてしまえば残りの日数も自動的に計算できますので、集中力を切らさずに勉強ができたはずだと思います。
2013年2月 FAR1回目受験 ◯ 82点
そんなこんなで初めてのUSCPA受験を迎えることとなりました。このときに受けたFARですが、試験直後の手応は全くと言っていいほどなく、まず間違いなく落ちたと思いました。ですので試験が終わってからわざわざBISKの過去問題集を購入して勉強しなおしていたくらいです。
ところが蓋をあけてみれば80点台での合格(合格最低点は75点)。思いもよらない結果に、全科目合格までの道のりもさほど険しくないのではと自信(いまにして思えば完全な盲信)を持つに至ったのでした。
2013年4月 BEC1回目受験 X 72点
FARの一発合格に気を良くして受けたBECですが、こちらはFARとは真逆でした。つまり試験が終わった直後はまず間違いなく合格しただろうと思っていたのにもかかわらず、結果は不合格。
USCPAは試験の手応えと結果が異なることが多いと聞いてはいたのですが、まさかこれほどまでに手応え通りにいかないものかとショックを受けたのを良く覚えています。
とうとう勉強しなくなる
絶対受かったと思っていたBECが落ちていたのは正直いってかなりまいりました。はっきりいって、もうあと何をやったら良いのか分からなくなってしまったんですね。また、ちょうどこのころ長男が生まれたために日常生活がバタバタしていたこともあって、もう勉強どころではなくなってしまいました。
受験を志して1年が過ぎ、FAR1科目合格をしたところで、ついに勉強生活は完全にストップしてしまいました。
勉強フレームワークとの出会い、そして全科目合格まで
2013年10月 今までの勉強法について考えなおす
そうこうしているうちに半年以上まったく勉強しない日が続きました。もうこの資格をとることもないかな、などと考え始めていたくらいです。そんなとき、ふと合格者の体験記を目にした際にある数字が目に止まりました。それは、「合格までに費やした勉強時間」というものなんですね。
このとき私は非常に驚いたことを良く覚えています。なぜなら、いままでUSCPAに限らず勉強時間などというものを気にしたことがなかったからです。勉強は空いた時間になんとなくやるというスタイルを一貫していたために、勉強時間を測定するという発想そのものがなかったんですね。
そこで平均的な合格時間数を1年で稼ぐにはどのくらい勉強する必要があるのかと計算すると、1週間で20時間という数字になるではないですか。これも非常に驚きました。はっきりいってこの数字を出すには相当の覚悟が必要です。
ここではじめて、いままで自分の勉強時間が圧倒的に足りないことを思い知ることになるのです。
面白いのは、普通ならばここで投げ出してしまいそうになるのですが、必要な勉強時間数がはっきりしたことでかえってやる気が出てきたことに気づいたのですね。この感覚をよくよく思い出してみるに、大学受験のときもこなさなくてはいけない膨大な量を前にして、かえって覚悟ができた体験と非常に似ていたのです。ここではじめて、自分がうまく勉強をこなしていたときとそうでないとき、そしてどうやったらやる気をうまく持続させることができるのかといったことをじっくりと考えることができたのです。その結果として、戦略的な勉強法とやる気スイッチを組み合わせ総合的な勉強法、つまり勉強フレームワークを思いつくに至るのでした。
2013年11月 勉強再開
勉強フレームワークを思いついてからは、じっくりと戦略を練ることにしました。まず最初にとりくんだのは監査論であるAUDでした。監査は全くといっていいほど初めての内容なので、まずは講義ビデオをしっかりと聴講します。もちろん勉強時間数が分かるようにスマホアプリを使って分単位で記録していきます。
USCPAでは1科目あたり250〜300時間というのが標準的な勉強時間数になります。そこで講義をすべて聴き終わってからは、この時間数になるまでとにかく過去問を何度も解き続けました。おおよそ3サイクルくらい回したところでこの時間数になるようでした。
目標の勉強時間数がはっきりしているというのがこれほどまでに心理的に安定した効果を出すとは自分でも意外でした。とにかく時間を測る。これが何よりも重要であることが驚くほど自分でもよく分かりました。
2014年1月 BEC2回目受験 ◯ 76点
AUDの勉強をしつつ、BECの2回目の受験も意識しました。自分の感覚ではBECは250時間も勉強していないように思えたため、追加でとにかく過去問を解きまくることが合格に必要なことだと考えるようになったからです。そこで12月に入ってしばらくしてからはAUDの勉強は一旦ストップさせ、BEC2回目に向けてとにかく過去問を何度も解き続けました。もちろん勉強時間は全て記録します。このときのBEC追加勉強時間は80時間ほどでした。
1月中旬のBECの試験は76点で合格。かなりギリギリでしたが、勉強した分だけ点数が伸びるのだということがよく分かりホッとしました。
2014年2月 AUD1回目受験 ◯ 86点
続いてAUDの試験を2月に受けました。AUDはここまでで250時間を超える分量を勉強していたため、かなり余裕をもって合格することができました。
2014年5月 REG1回目受験 ◯ 78点
AUDの試験が終わってからは最終科目であるREGの勉強を始めました。REGは税法を中心に暗記が中心の科目になるため、暗記が得意でない自分にとってはあまり気乗りのしない科目ではありました。しかし試験日までに250時間勉強するには、かなりハードにやりこまなくてはいけないことははっきりしていたため、長だるみせずに集中して取り組めました。
結果的には250時間に少し足りない勉強量だったために不安だったのですが、とりあえず70点台で合格することができたのでした。
こうして2014年の5月に全科目合格することができました。勉強フレームワークをしっかりと意識できてからは充実した勉強時間を過ごすことができたと思います。
そして転職へ
USCPAに受かったのは大変うれしかったのですが、それによって会社での業務内容が変わるわけでもありませんし、そのようなポジションへの異動も難しそうでした。
そこでe-ラーニングコースを受講していたスクールに相談したところ、監査法人という会社があることを知り、転職活動してみることにしました。その結果、Big4と呼ばれる大手監査法人から内定をもらうことができたのでした。
理系出身の元科学者で財務経理の経験も皆無の自分がこのようなチャンスを手にすることができたのも、すべてUACPAという資格があってのものだと思います。
まとめ
ここまで簡単にUSCPA受験の流れを、自分の体験を元にして振り返ってみました。
今にして思えば、やはりきちんとした勉強のやり方を完成させてからのスピードは桁違いに早かったように思います。
USCPAに限らずありとあらゆる勉強について、その詳細なやり方については色々なところで目にすることが多いと思います。ただ、勉強を続けるにはそういった具体的な内容よりも、どうやったらモチベーションを保ち続けながらコツコツと努力し続けることができるのかという、勉強のやり方自体の理解が欠かせないように思えます。そんなことを気づかせてくれた受験体験でした。
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